経済学に難しい教材は不要(この本だけ読めばオーケー)

書評

経済学について学びたいと思ったとき、マクロ経済とかミクロ経済とか、そもそもくくりからして難しいなと感じたことがあります。

筆者も株を始めて経済について学びたいと思い、その教材は何が良いか探しましたが、とりあえずこの本だけ読めばオーケー!と思えるものを見つけました。

この本だけ読めばオーケー

ジャーナリストの池上彰氏著の「池上彰のやさしい経済学(1.しくみがわかる)」「池上彰のやさしい経済学(2.ニュースがわかる)」のセットです。

内容

1.しくみがわかる(以下、1巻)の内容

身近な話題で経済とは何かを考えるきっかけをくれる

1巻の冒頭では、寿司屋でお寿司を食べる、ホテルのラウンジでコーヒーを飲む、など想像しやすいシチュエーションを例に挙げながら経済学について考えていく場面があります。

社会主義経済と資本主義経済の違いについて解説

ソ連などが用いた社会主義経済、アメリカなどが用いた資本主義経済、これらがどのような考え方に基づいたものかが解説されています。

各々の時代の学者の主張について解説

1巻で一番ページ数を確保して解説しているのがこの部分です。近代経済学の父と呼ばれているアダム・スミスに始まり、社会主義経済を提唱したカール・マルクス、赤字国債発行による公共事業を推進を提唱したジョン・メイナード・ケインズ、とにかく自由放任を推奨したミルトン・フリードマンの4人です。

著者である池上氏は本文の中で「経済学というのはその時代の問題に応じた処方箋なのです」と仰っています。

例えば、不況時の失業をどう考える、自国の産業を守るための関税をどう考える、など当然ながらその時々で色んな問題が発生します。経済学というのは各々の時代で発生した問題を解決しようと、「こうしたらいいんじゃないか」という提案によって発展してきたことが分かります。

各学者の主張についてここで詳しくは触れませんが、一言だけ筆者の見解を述べると、「フリードマンの主張はかなり攻めてるなあ」という印象です(笑)

貿易についての解説

TPP、自由貿易協定、経済連携協定など、日頃のニュースで耳にするものの内容について理解することができます。貿易というのは自国の産業(または利益)を守るための関税と強力に結びついているということも。

また、比較優位という考え方が出てきますが、面白い内容でした。

2.ニュースがわかる(以下、2巻)の内容

インフレ、デフレについて

合成の誤謬、という言葉を用いてインフレ、デフレについて解説されています。

国が行う財政政策や金融政策について

需給バランスの行き過ぎを修正するために行われる国の方策について解説されています。

個人的には、日本で採用されている所得税などの源泉徴収制度は国際的には非常に珍しいものである、というのが面白かったです。

日本のバブル崩壊やリーマンショックなど大きな出来事について解説

日本のバブル崩壊では土地神話、リーマンショックでは空前の住宅ブーム、というどのようにして事態がどんどん過熱していくかが描かれています。

個人的には、本文でも引用されていた「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というオットー・フォン・ビスマルクの言葉に想いを馳せるようになりました。

戦後日本の経済史について

戦後、GHQが財閥解体をさせて自由競争を促したり、労働組合を作らせて賃金の上昇と消費の向上を促したり、日本経済を立て直すための方策について描かれています。

また、自衛隊の発足は朝鮮戦争がもとになっていたり、その朝鮮戦争の特需で日本経済が向上していったりと、戦後日本の経済史について描かれています。

オススメの理由

さすがレギュラー番組を持ってみえる方といいますか、事あるごとに身近な例にたとえてくれるので分かりやすさが半端ない。

この本を読むと、とにかく経済とは需要と供給のバランスで成り立っているいるものなんだ、ということが分かります。

商品価格、地価、株価、金利、為替レートなど、ありとあらゆるものがその時々の状況や人間心理によって需給バランスによって変化していく。この前提がまず存在していて、これらが行き過ぎた場合に政策などによって歯止めをかける、ということが理解できるようになると思います。

氏も本文で同じことを仰っていますが、経済学と聞くと「なんだか難しそう」と必要以上に構えてしまう方もいると思います。

しかし、この本では極力難しい表現をせずに、かつ、事あるごとに身近な例を使って解説してくれています。そのため途中で読むのをやめてしまうということも少ないと思います。

下手に分厚い専門書を読むよりも、よほど理解できる、役に立つ内容のオススメ書籍です。

good luck!

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